事業承継税制とは?——非上場株式の相続税・贈与税が猶予される仕組みと注意点

中小企業の後継者が非上場株式を承継する際、相続税・贈与税の納税が猶予される事業承継税制の仕組み、要件、メリット・デメリットを解説します。

事業承継税制とは何か

中小企業のオーナー経営者が亡くなったとき、後継者は自社株式(非上場株式)を相続することになりますが、その評価額は業績次第で非常に高額になることがあります。会社の規模によっては相続税だけで数千万円から億単位になり、納税資金を確保するために自社株を売却したり、最悪の場合は会社の事業継続そのものが危うくなるケースも少なくありません。この問題に対応するために設けられているのが「事業承継税制」です。一定の要件を満たす後継者が非上場株式を相続・贈与で取得した場合、その株式にかかる相続税・贈与税の納税を猶予し、一定の条件を満たし続ければ最終的に免除される制度です。

制度の基本的な仕組み

事業承継税制は正式には「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例」と呼ばれます。仕組みを簡単に整理すると次のとおりです。

  • 納税猶予:後継者が取得した非上場株式にかかる相続税・贈与税のうち、対象となる部分の納税が猶予される
  • 免除:後継者がさらに次の後継者へ株式を承継するなど、一定の条件を満たせば猶予されていた税額は最終的に免除される
  • 取り消しリスク:猶予期間中に代表者を退任する、雇用要件を満たさなくなるなど一定の事由に該当すると、猶予が打ち切られ利子税とあわせて納税義務が発生する

2018年度税制改正で導入された「特例措置」では、対象株式数の上限(従来は発行済議決権株式総数の3分の2まで)が撤廃され、納税猶予割合も100%に引き上げられるなど、大幅に使いやすくなりました。ただし特例措置の適用には、都道府県への「特例承継計画」の提出が期限内に必要な点に注意が必要です。

適用を受けるための主な要件

事業承継税制の適用には、会社・先代経営者・後継者それぞれについて細かな要件が定められています。代表的なものは次のとおりです。

  • 会社の要件:中小企業者に該当すること、資産管理会社(保有資産の大半が有価証券や不動産である会社)に該当しないことなど
  • 先代経営者の要件:会社の代表者であったこと、相続開始・贈与の直前において筆頭株主であったことなど
  • 後継者の要件:相続・贈与により会社の代表権を有すること、同族関係者とあわせて筆頭株主になることなど
  • 雇用維持要件:猶予開始後5年間で平均8割以上の雇用を維持すること(特例措置では要件を満たせなくても猶予が継続できる緩和措置がある)

メリットと注意すべきデメリット

最大のメリットは、多額の相続税・贈与税の納税資金を用意できなくても事業を継続できる点です。自社株を売却したり会社から借入をしたりする必要がなく、経営の安定性を保ったまま世代交代が可能になります。一方で、次のようなデメリットや注意点も存在します。

  • 手続きの継続的な負担:猶予を継続するために、毎年(5年経過後は3年に一度)都道府県・税務署への報告書提出が必要で、専門家のサポートが実質的に不可欠
  • 取り消し時の負担が大きい:猶予が打ち切られると、猶予されていた税額に加えて利子税も一括で納付しなければならない
  • 会社の自由度が下がる場合がある:M&Aによる会社売却や事業の大幅な転換が、猶予の取り消し事由に該当する可能性がある

教育資金・結婚子育て資金の一括贈与制度との違い

事業承継税制と混同されやすい制度に、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税非課税措置があります。これらは金融機関に専用口座を開設し、資金使途を限定して一括贈与を非課税にする制度で、対象は現金や有価証券の贈与であり、非上場株式の承継を目的とした事業承継税制とは性質が異なります。オーナー企業の後継者にとって重要なのは非上場株式の承継であるため、両者を混同せず、自社の状況に応じてどの制度が使えるかを整理しておくことが大切です。

検討する際のポイント

  • 特例承継計画の提出期限が定められているため、事業承継を検討し始めた段階で早めに税理士へ相談する
  • 猶予後の継続的な手続き負担を見越して、顧問税理士との長期的な関係を前提に制度活用を判断する
  • 将来的なM&Aや事業転換の可能性がある場合は、猶予取り消しリスクとのバランスを慎重に検討する

まとめ

事業承継税制は、後継者に多額の相続税・贈与税の負担がのしかかることを防ぎ、中小企業の事業継続を支援するための重要な制度です。ただし要件が複雑で、猶予継続のための事務負担や取り消しリスクも伴うため、制度の利用を検討する際は早い段階から専門家に相談し、自社の将来像とあわせて計画的に準備を進めることが欠かせません。

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